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こんにちわ、大糞先生!

やあ、こんにちわ、星の王子さま!

どうですか、研究のほうは。

いやー、それよりも、聞いてください、今朝(けさ)、大きくて、りっぱなのが出ました。年(ねん)に一度、あるかないかの大糞(おおぐそ)です。なんと40センチ近くの形(かた)のいいのがです。感激です。さっそく、研究に取りかかります。

それは、よかったですね。出るもんが出ないと困りますから。

ええ、臭(くさ)い、汚い、と、嫌われますが、これが、すこぶる大事なもので、糞(ふん)詰まりは、とても苦しいものです。臭(くさ)いのは、アンモニア、メタン、硫化水素、インドール、スカトール、などの、悪臭成分と、消化酵素の臭(にお)いで、汚いのは、大腸菌などの有害生物が多いということで、色は、胆汁に含まれるビリルビンの分解物であり、まあ、人間にとっては滓(かす)ですし、全体として有害ですから、そのための臭(にお)いでもあり、捨てますが、他のある生物にとっては、これはまた、ご馳走でもあります。

ところで、糞(くそ)といえば、偽善、という意味に使われますが。

ええ、失礼な話です。糞(くそ)のほうが、よほど綺麗(きれい)で、他に必要なもので、役にもたちます。それに比べると、偽善は、たちの悪い破壊で、善の顔で悪さをし、善を破壊し、そのまま善の顔でいつづけます。百害あっても一利もなしです。その臭さ、汚さ、といったら、糞(くそ)の比ではありません。糞医者、糞坊主、糞役人(政治家)、は、その三大糞と言われているもので、医者と役人は、中には、りっぱな仕事をする人もいますが、坊主はいけません、坊主は。坊主丸儲け、淫乱(いんらん)坊主ばっかりです。たしかに、まじめに修行してるのも二三いるかもしれませんが、晴れた真昼の行灯(あんどん)、道端の糞(フン)コロガシのようなもので、口が糞(くそ)臭くなりますので、これ以上、言いたくありません。

袈裟(けさ)や数珠(じゅず)、そして、坊主頭は、そのステイタスシンボルとしての、商売道具、遊び道具、というわけですか。

ええ、坊主丸儲け、淫乱坊主、用の、商売道具、夜遊び道具、です。

話が、下劣に横にそれましたが、糞(くそ)の使い道というのは?

ええ、一番は、肥料でしょう。メタンの原料としても、有望ですし、なんせ、大量なんで、うまくすれば、代替エネルギーになると思います。排泄されたら、その場ですぐに電気、ガスなどのエネルギー源に変換され蓄えられ、その滓(かす)は、肥料として自動的に撒かれたり、自分で撒いたり、売ったりと。あの大糞(偽善)も、こんなふうに少しでも役に立ったら、どれだけいいか・・・、思い浮かべてください・・・、あの糞坊主、頭が・・・、いくつも、いくつも、朝日に照らされて、あの広い肥溜(こえだめ)に、プカプカ浮いている光景を・・・、ああ、なんと清清(すがすが)しい、朝、なんでしょう!

考えてみれば、糞をしない生き物は、いないんじゃないですか。

ええ、ほとんどすべての生き物は、糞を、その生き物にとっては無用で有害な滓(かす)として捨てながら生きています・・・。それで、・・・、その糞で、思い出しました・・・、ずっと昔の話です・・・、私の母親が・・・、亡くなる一ヶ月ほど前、・・・。

どうされました・・・?

いえね、私の母が、その朝、私に、嬉しそうに言うんです。”大きくて、りっぱなのが出たの。変な話だけど・・・”、と。私は驚きました。普段、そんなことを言う母親ではないし、今まで聞いたこともなかったものですから、本当に驚きました。聞くと、しつこい便秘だったということです。

それは、よっぽど、嬉しかったんでしょうね。

ええ、その時は、私もそう思いましたが・・・。

それで、どうしました・・・?

ええ、その時は、私もそう思いましたが・・・、それからしばらくして・・・、その母が・・・、亡くなりました・・・。

それは、また、どうして・・?

それがきっかけで、私は、病理で、この大糞の研究を、・・・。

それで、お母様は、一体、どうして・・・?

病院で・・・、魔物にやられました・・・。

病院で、魔物・・・?

ええ、病院に、潜(ひそ)む、魔物、羅刹(らせつ)、にやられました・・・。

・・・

救急で運ばれた病院の、当直の羅刹女の、怠慢と姦計(かんけい)の餌食(えじき)になりました。

・・・

その羅刹女の怠慢で、救急の初期治療がなされず、その姦計(かんけい)の治療で・・・、どんどん衰弱し・・・、長い一週間・・・、ついに、あの夜・・・、餌食(えじき)になりました。

・・・

その羅刹女から逃れようと、明日、転院というときに、その怠慢と姦計(かんけい)の発覚を恐れた、その羅刹女に、その夜、やられました・・・。

・・・

羅刹は、糞(偽善)を食します。昔、過酷な糞(くそ)払いを強(し)いられていたことがあり、それ以来、糞(偽善)を餌食(えじき)にするようになりました。

・・・

その羅刹女は、私達を、糞(偽善)と思い込み、餌食(えじき)にしました。

・・・

母は、あっという間に逝ってしまいました。

・・・

病名は、その羅刹女の、姦計の、カルテと、他人のもので改ざんされたレントゲン資料とで、告げられました、が・・・

・・・

さて、どうしたものかと、思案しました・・・

・・・

結局、その現実を、すべて、受け入れることにしました。

・・・

もう、意識のない母の耳元で、言いました。

・・・

母さん、何をされたの・・・。

・・・

昨日(きのう)、あんなに、元気だったのに、一晩で、こんなになって・・・。

・・・

母さん、何をされたの・・・。

・・・

ひどいことするね・・・、母さん・・・。

・・・

人間じゃないよね・・・、母さん・・・。

・・・

随分、唐突(とうとつ)で、理不尽な、仕打ちを受けてるね・・・、母さん・・・。

・・・

あんな羅刹に、出くわすなんて・・・、よっぽどの、借金があるんだね・・・、母さん、・・・。

・・・

よっぽどの、借金が・・・。

・・・

よっぽどの、借金・・・。

・・・

それは、虐殺する、”私”、が、虐殺される、”私”、を、また虐殺し、また虐殺される、という愚かさ・・・。

・・・

母さん、借金、返そう・・・。

・・・

母さん、借金、返そう・・・。

・・・

・・・、母は、うなずいているように見えました・・・。

・・・

母さん、借金、返そう・・・。

・・・

借金、返そう・・・。

・・・

母さん、借金、・・・。

・・・

母さん、・・・。

・・・

母さん、・・・。

・・・

・・・

・・・







(この羅刹女の私は、それからしばらくして、捕まり、地獄で、またいっそうの過酷な糞(くそ)払いを強(し)いられています。この世に、糞(偽善)のある限り、この羅刹達は出没しつづけ、その理不尽な行為はしつづけられ、戦時中、丸太と称し、人体実験をしたごとく、その理不尽な行為はしつづけられ、敗戦になっても、それが裁かれた跡もなく、あの世で裁かれ、この世でまんまと善人でありつづける、この世に、糞(偽善)がある限り、その食いっぱぐれはありません。)

(2008.12.07)
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