ところで、先日、お話ししていただいた、法則云々のことを、もう少しうかがいたいのですが？
法則が繰り返されるということは、その法則によって存在するすべての現象、物事（ものごと）も繰り返される、ということですよね？
ええ、そのボタンが押されれば（選択されれば）、繰り返されます。
そのボタンを押す、というところと、そのボタンと自然とのかかわりをうかがいたいのですが？
そうですね、まず、その繰り返しの法則があってはじめて、世界は存在するものとして解釈することができます。その繰り返しの連続によって解釈された世界の中で、今という時間は、便宜的に選択された区切りで、それは時間的にも空間的にも止まっているゼロ点であり、そのゼロ点以外に今の現実はないから、現実はゼロということになります。そのゼロの点で、”私”、が、何をしているかというと、選択をしている。ゼウスの矢が止まらないように、選択し続けてはじめて時間と空間とを連続としてとらえることができますから、”私”、は、絶えず選択を繰り返している、ということです。何を選択しているかというと、因（ボタン）を選択している。因を選択し（押し）、その果（世界）を解釈して、またその解釈された世界から因を選択し、その果を解釈して、・・・、と、の繰り返しで、そのゼロ点での因縁果の繰り返しの、その果の現象の記憶の連なりを空間と解釈し、その空間の連続を時間と解釈し、それらの繰り返しの連続を、時空間をともなった現実の世界と解釈している、ということです。しかし、これは現実の現れかたで、実際は、因（ボタン）の中にある因縁果の因（ボタン）を選択し（押し）、その選択を繰り返していることになります。ちょうど現実世界とその歴史とは逆方向に進むように。ただし、その繰り返しも、人間の認識、解釈の過程で、記憶によって補（おぎな）われ、補われた部分は、ほとんどがそうなんですが、省略されます。たとえば、ボタンを押すと枝からリンゴが離れて地面に落ちる、としますと、なぜボタンを押すとリンゴが離れて落ちるか、ボタンを押すと枝が揺れるから、なぜ枝が揺れるとリンゴが離れて落ちるのか、ボタンを押すと枝が揺れて枝とリンゴが離れたから、なぜ枝とリンゴが離れるとリンゴが落ちるのか、ボタンを押すと枝が揺れて枝とリンゴが離れて地面に引っ張られたから、・・・、なぜ引っ張られたか、・・・、質量と質量の間に引っ張る力が働くから・・・、なぜ・・・、と、ボタンを押すと枝からリンゴが離れて地面に落ちるという、そのボタンの中に、ボタンを押すと枝からリンゴが離れて地面に落ちる、という現象の、そこに至る、すべての法則、それがもたらす、すべての現象が因として存在いしている、ということです。つまり、そのボタンを押す、から、リンゴが地面に落ちる、までを区切り、リンゴが地面に落ちた時点を今として、その歴史を遡（さかのぼ）ると、なぜ、という因が、ボタンや枝やリンゴの存在理由（因）そのものを含め、無数に存在しますから、そのボタンを押すという ことは、そのすべての因のボタンを押し続けているのと同じことであり、リンゴが地面に落ちた時点を今としたときも、そのすべての因を押し続けたのと同じことになりますから、ボタンを押した今も、リンゴが地面に落ちた今も、そのすべての因を押し続けていることになり、それは、今という時間の中に、その今という時間の中の、今選択する現象物のボタンの中に、そのすべての因が含まれている、ということになります。
そのボタンを押すからリンゴが地面に落ちるまでの因を選択するとありますが、これは物事の経過を追っているに過ぎないのではないのですか？
それと、そのボタンを押すというのが選択だということはわかりますが、その後のリンゴが地面に落ちるまでの自然現象が選択というのは、わかりにくいんですが？
そのボタンも枝もリンゴも地面もその存在因はすでにあるもので、あとはボタンを押してリンゴが地面に落ちるまでのすべての因が経過のうちの因をたどっているということですが、リンゴが地面に落ちた時点で、そのリンゴに視点を移した場合、そのすべての因は、そのリンゴの存在因ということになります。するとその存在因が新たに加わったとみるべきか、もともとあったとみるべきか、これは、法則の所以（ゆえん）を考えてみると、法則は、時間の経過の上に成り立ちますので、それに則っているその現象もまた時間の経過を伴って現れます。さらに、たとえば、物質の質量の減少分がエネルギとして放出される、という法則（因）があるとして、この法則の定義の中に、その物質の存在因、その質量の存在因、そのエネルギーの存在因、と、質量の減少、という縁と、エネルギーが放出される、という果と、が含まれていますので、つまり、その法則自体の中に、その因とその縁とその果とが定義づけられていますので、その法則から生ずる現象も、その法則に則って、その、リンゴが地面に落ちた時点でのそのすべての因は、それ以前に、もともとあるものということになります。すると、もともとあった因を選択し、その繰り返しの量を、時間の経過と解釈している、ということになります。ですから、その選択の繰り返しが速すぎて解釈できなければ、不確実となって、確率の問題になります。
次に、選択には、意識するものと無意識のものとがあり、無意識は、ことばどおり、意識を前提としたものです。そこで、ボタンを自然現象に置きかえて、その自然現象は、意識（意志、意思）する、”私”、の身体としての無意識の、”私”、つまり、”私”、ソノモノ、の振る舞い、と解釈して、風が吹くと枝からリンゴが離れて地面に落ちる、なぜ風が吹くとリンゴが離れて落ちるか、風が吹くと枝が揺れるから、なぜ枝が揺れるとリンゴが離れて落ちるのか、風が吹くと枝が揺れて枝とリンゴが離れたから、なぜ枝とリンゴが離れるとリンゴが落ちるのか、風が吹くと枝が揺れて枝とリンゴが離れて地面に引っ張られたから、・・・、なぜ引っ張られたっか、・・・、、質量と質量の間に引っ張る力が働くから・・・、なぜ・・・、と、風が吹くと枝からリンゴが離れて地面に落ちるという、その風や枝やリンゴや地面の中に、その風や枝やリンゴや地面という現象物そのものとともに、風が枝を吹くと枝からリンゴが離れて地面に落ちる、という現象の、そこに至る、すべての法則、それがもたらす、すべての現象が、因として存在いしている、ということです。すると、意識して押すボタンでなくとも、無意識の自然に存在するあらゆるものがボタンと同じ因として存在し、その因の中に、そのすべての存在が、因として存在している、ということになります。つまり、ボタンも風も枝もリンゴも地面も、質量も、・・・、因となり、押す、吹く、揺れる、引っ張る、・・・、が、縁となり、枝とリンゴが離れる、リンゴが離れて地面に引っ張られる、質量と質量の間に引っ張る力が働く、・・・、が、果となって、さらにその縁と果にも、そのすべての因縁果とそのすべての現象が含まれていますから、そのそれぞれの法則とそこから生み出されるそのそれぞれの現象とのすべての直結した繰り返しが世界をつくりだしている、ということになります。つまり、その今というゼロ点で、意識（意志、意思）する、”私”、と、無意識の、”私”、とが、絶えず、ボタンを押し（因を選択し）続けて、世界をつくっている、ということです。
そのボタンは、法則が因となって存在している現象物ですが、その現象物が因になるというのが、わかりにくいんですが・・・？
それと、その法則自体も不確実、ということもありうると・・・？
ええ、法則は、確かに、”因”、として存在し、その存在の現われである現象物は、”果”、としても、”私”、の対境の、”縁”、としても存在していますが、法則は、常に、内在するものであり、”私”、が、日常、認識できる対象ではありません。ここで重要なのが、”私”、が、今、選択している、というのが現実にあるわけですから、ここでは、これを基準にして、あくまでも主体は、作用する作用点の、”私”、にあり、その作用点を、”縁”、とすると、支点の、”因”、は、今、それを見ている、聞いている、触れている、”縁”、によって生じた、その現象物であり、その現象物の、”因”、を、たとえばボタンとして、それを押すという、”縁”、とから生み出される、或いは、見い出される、そのなんらかの現象なり現象物が、”果”、ということになります。そもそも、法則自体が繰り返される法則とは、”因、縁、果”、のそれぞれに、それぞれが内在し繰り返されることを意味しますので、その支点の、”因”、は、法則でも、現象、或いは、現象物でも、いいのです。
それと、法則自体の不確実性ですが、法則も人間の、”私”、の解釈の域を出ないということと、その法則によって、テレビやパソコンや、原爆までつくってしまった、という事実が存在しています。
すると、その因縁果のそれぞれが同じ因縁果であれば、同じことが繰り返されると？
ええ、ある因を選択（縁）し、その果の中に、その同じ因があって、それを同じように選択すれば、同じ果になり、それが繰り返されれば、同じことが繰り返されます。たとえば、月は慣性で宇宙の果てに飛び続ける、地球がその月を引っぱって落とす、その月はさらに慣性で宇宙の果てに飛び続ける、その地球はさらにその月を引っぱって落とす、その月はさらに慣性で宇宙の果てに飛び続ける、・・・、と、これが繰り返されて、その月はその地球のまわりを飛び続ける、といったように。
それと、わかりにくいのが、その無意識の、”私”、が、絶えず、ボタンを押し（因を選択し）続けて、というのが、意識しないものが選択する、ということですか？
ええ、今言ったすべてのことが、人間の、”私”、の解釈によるものですから、自然の現象の因縁果の法則の、”縁”、の、ところを解釈するのに、”選択”、という言葉を使うわけで、それは、因も、縁も、果も、法則も、そもそも、言葉すべてが、人間側の都合によるものなので、単なる文学的な擬人化とは違います。たとえば、リスが枝を揺らしてリンゴを落とす、として、それは意識しての行動ではないのですが（ここでは、ないとして）、その行動にも、”選択”、という言葉を使います。
すると、その選択する、意識（意志、意思）する、”私”、と、無意識の、”私”、とは、どこでつくられているのでしょう？
それは、それ自体を自ら生み出す唯一の存在である法則ソノモノが、無意識の、”私”、ソノモノとしても、”ソノモノ”、として、存在していて、人間の脳は、自分の便宜のために、その法則ソノモノを、法則と解釈し、その法則による自然現象を、無意識の、”私”、ソノモノの振る舞いと解釈し、その認識、解釈する自分を、意識（意志、意思）する、”私”、として、解釈して、その自分の、”私”、の、世界をつくり出している、ということです。
つまり、因縁果の法則も、その繰り返しの法則も、そのボタンも、その選択も、”私”、や、”私”、ソノモノも、その法則ソノモノも、人間の脳が、自分の便宜のために、翻訳し、解釈ている世界だ、ということですか？
そうです。人間の、”私”、は、今という時空間の消滅しているゼロ点を、まったくなにもないわけではないが解釈できないもの（空）と解釈し、法則にしたがって、因を、選択すること（縁）によって、現れた現象（果）の、世界の、その一連の繰り返しによって、それを一連の時空間の世界、と解釈して、生活の便宜のために使っている、ということです。
未来におこる物事（ものごと）も因としてすでに存在するということですが、そこのところをもうし少しうかがいたいのですが？
ええ、便宜的に今という区切りで存在しているその物事（ものごと）のすべての法則とそのすべての現象とが因としてその物事（ものごと）に存在しているということで、その物事（ものごと）の未来の今という区切りでも同じだ、ということは、今、存在するその物事（ものごと）についての説明で明らかになって（解釈されて）いるはずです。
すると、未来の現象は、今、解釈できない不確実なものですから、やはり確率が、重要ということでしょうか？
ええ、確率の精度が上がれば、未来の現象の認識の精度も上がります。
では、その記憶も、さらに重要になるのでは？
ええ、記憶（メモリー）（因）の情報は、”私”、の、世界を、世界たらしめている重要なものです。
つまり、今の現象の因の情報が増えれば増えるほど、あとは技術がついていけば、たとえば、天気予報が実在感をともなうとか、・・・？
いや、未来が実在感をともなうということは、今という時間と、未来の今という時間が、・・・？
すると、この世界が四次元のパラパラ漫画のようなもので、選択によって、その現象も、空間も、時間も、変わってくると、・・・？
ええ、パラパラ漫画も、映画も、テレビも、パソコンも、この原理を応用しています。
まさに、コンピューターは、０と１との、選択の世界ですよね。
ええ、コンピューターの瞬間の選択の速さは、人間の脳よりもはるかに優れていますが、質、量とも、そのコンピューターの世界も、その選択を含めた人間の解釈の世界も、自然（空なる自然、自然ソノモノ、無意識の、”私”、ソノモノ、法則ソノモノ、ソノモノ）には、とうてい及びません。
母なる自然、ですか・・・。
ええ、母（自然）は、常に、子（人間）の解釈を、超えたものです。
(2008.04.20)
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