あの時も、そうでした。
私達の大隊は、敵の総攻撃に遭い、多くの兵を失い、組織も壊滅状態でした。私は小隊を指揮し、その後の作戦を決めるための会議に出席していました。会議といっても、すでに組織は壊滅状態でもあり、いるのは、大隊長と私を含めた小隊長３名とその部下１３名と一般兵がまわりを取り囲み、周辺に散らばる負傷兵合わせて総勢５０数名。これからの、進退を決めるものでした。大隊長は玉砕を主張し、私は降伏を主張しました。大隊長の言い分は、戦いきって玉砕するのが、我が帝国陸軍の軍隊であり、天皇陛下の軍隊である、というものでした。私の言い分は、降伏して、国家再建のために戦う、というものでした。
私は、非常事態ということで、部下や一般兵の意見を求めました。これは日本の軍隊としてはありえないことでしたが、非常事態を強調し、部下や一般兵の意見を求めることになりました。しかし、軍隊でもあり、上官の命令は絶対であり、天皇陛下のご命令であると、教育されていましたので、大隊長の意見に逆らう意見は、とうとう、出ず、結局、大隊長の意見が通り、戦いきって玉砕、と決まりました。
私達は、玉砕しました。
ここで、私は、大隊長を責める気はまったくありません。大隊長は、一兵卒の意見を許しました。これは、異例中の異例で、このことだけでも、大隊長を責める気はありません。ただ、上官の命令は絶対であり、天皇陛下のご命令であると、徹底して、教え込まれてきたことに対しては、これでは、馬鹿な上官に、部下は、皆殺しにされかねない、と思いました。間違い、読み違い、は誰にでもあることですから、たとえ軍隊組織であっても、その間違い、読み違い、を正す方法（すべ）を持っていなければなりません。
その方法（すべ）として、それには、これまでの軍隊組織では、到底、考えられない、組織論からいっても、非常識なことでしょうが、たとえ軍隊組織であっても、組織全体の隅々、一兵卒にいたるまで、自立している、というのが、理想です。
確かに、命令が滞るのではないかとか、意思決定がスムーズにいかないのではないかとか、思われがちですが、この状況での滞る、命令、意思決定というは、思案の残る、命令、意思決定であり、皆が納得できる、命令、意思決定ではない、ということです。皆がより納得できる、命令、意思決定なら、事は、よりスムーズに効率よく運ぶでしょう。つまり、上司が、部下に、納得できる、命令、意思決定が出せるかどうかにかかりますから、馬鹿な上司は、淘汰され、その馬鹿な上司のために、皆殺しにされる確立は、ゼロに近くなります。
あの会議でも、恐らく、それはおかしい、そうじゃないんじゃないか、という意見もあったに違いないのですが、それが表に出なかった。そういう体制ではなかった、ということです。
それはおかしい、そうじゃないんじゃないか、という声こそ、それが善であるならば、それは、決定権のより上位の善の普遍の私の声ですが、その私自身のより善の普遍の私の声に耳をかせずに、他の決定権、つまり、決定権のより下位の私に、その決定権を譲り、その選択を許してしまった、ということです。
その私自身のより善の普遍の私の声に耳をかせずに、他の決定権、つまり、決定権のより下位の私に、その選択を許してしまう、私が、多ければ多いほど、その組織は、馬鹿な上司によって破壊される確率が、百パーセント近くになる、ということです。
その馬鹿な指導者に、この世界が、皆殺しに、されないためにも、
これからの組織には、より最小限の、より自立した、より善の普遍の私による、より効率のよい、運営が、求められることになるでしょう。
(2008.11.22)
next
back
index
home
other lita site