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理の一念三千
仏陀の悟った根本の法とは何かを探求していた天台は
無量義経の中の
”一法”という言葉に着目し、生命の一瞬の生滅の繰り返しによる世界創造がその”一法”の本質であることを
無量義経から読み取った。しかしそれ以上の具体的な”一法”の実態は無量義経には説かれておらず、
他の無量義経以前の般若経、大日経、楞伽経、阿弥陀経、阿含経、華厳経等にも
そのすばらしさ(大日経)や
世界との関わり方(華厳経)や現れ方(般若経)等の部分的概観的なものしか説かれておらず、無量義経の
次ぎの法華経においてはじめてその”一法”の具体的な実態が明かされていることがわかった。
すなわち、
法華経の方便品、譬喩品における法説衆(法によって悟る衆生)の舎利弗の受記から、
舎利弗がその文から悟ったとされる方便品の”諸法実相”の文に
その一法の具体的な実態を読み取った。すなわち、
”諸法実相・所謂諸法・如是相・如是性・如是体・如是力・如是作・如是因・如是縁・如是果・
如是報・如是本末究竟等”。 |
諸法(世界)の実相(一法)は、所謂(いわゆる)諸法(世界)
として、
如是相(如はこれ相と現れる)・如是性(如はこれ性と現れる)・如是体(如はこれ体と現れる)・
如是力(如はこれ力と現れる)・如是作(如はこれ作と現れる)・如是因(如はこれ因と現れる)・
如是縁(如はこれ縁と現れる)・如是果(如はこれ果と現れる)・如是報(如はこれ報と現れる)・
如是(かくのごとく)
(如是相)を”本”として(如是報)を”末”として究竟して等(ひとし)い。また実相(一法)を”本”として、
諸法(世界)を”末”として
究竟して等(ひとし)い。つまり、諸法(世界)は実相(一法)であり
その実相(一法)とは如(空)なるものが相・性・体・力・作・因・縁・果・報の”相”から”報”までの統一された
変化相(仮)として
現れるもの(世界)である。これは”仮諦”をあらわしている。つまり、
諸法(世界)は実相(一法)であり”仮諦”である。 |
諸法(世界)の実相(一法)は、所謂(いわゆる)諸法(世界)
は如であり、
是相如(相はこれ如である)・是性如(性はこれ如である)・是体如(体はこれ如である)・
是力如(力はこれ如である)・是作如(作はこれ如である)・是因如(因はこれ如である)・
是縁如(縁はこれ如である)・是果如(果はこれ如である)・是報如(報はこれ如である)・
是(これは)
(是相如)を”本”として(是報如)を”末”として究竟して等(ひとし)い。また実相(一法)を”本”として、
諸法(世界)を”末”として
究竟して等(ひとし)い。つまり、諸法(世界)は実相(一法)であり
その実相(一法)とは相・性・体・力・作・因・縁・果・報の”相”から”報”までの統一された変化相(仮)(世界)は
如(空)である、
というものである。これは”空諦”をあらわしている。つまり、諸法(世界)は実相(一法)であり”空諦”である。 |
諸法(世界)の実相(一法)は、所謂(いわゆる)諸法(世界)(即)
如は是であり、相如是(相即如は是である)・性如是(性即如は是である)・体如是(体即如は是である)・
力如是(力即如は是である)・作如是(作即如は是である)・因如是(因即如は是である)・
縁如是(縁即如は是である)・果如是(果即如は是である)・報如是(報即如は是である)・
(相如是)を”本”として(報如是)を”末”として究竟して等(ひとし)い。また実相(一法)を”本”として、
諸法(世界)を”末”として
究竟して等(ひとし)い。つまり、諸法(世界)は実相(一法)であり、
如(空)なるものが相・性・体・力・作・因・縁・果・報の”相”から”報”までの統一された変化相(仮)(世界)として
現れるものであり、かつ、その実相(一法)とは相・性・体・力・作・因・縁・果・報の”相”から”報”までの
統一された変化相(仮)(世界)は如(空)である、
というのが是(真理)である。これは”中諦”をあらわしている。つまり、
諸法(世界)は実相(一法)であり”中諦”である。 |
したがって諸法(世界)は実相(一法)であり、
”中諦”を”本”、”仮諦”を”末”として究竟して等(ひとし)い、三諦即一諦、一諦即三諦である。
そしてその最高の優位は三身即一身、一身即三身の如来となる。つまり、諸法(世界)である実相(一法)は
小乗教等が説く単なる
”仮諦”ではなく、般若経、華厳経等で説く単なる”空諦”或は単なる”中諦”でもなく、法華経等で説く
”空、仮、中”の”三諦”が本末究竟等する”円融の三諦”がその実相(一法)であるということになり、
それを最高の優位に
まで具現した生命を”一身即三身如来”という。 |
実相(一法)の名を明かす。
|
また、その実相(一法)の名は、薬草品の
”以一妙音、演暢斯義”、化城品の”常楽説是、妙法蓮華経”、提婆品の”我有大乗、名妙法蓮華経”等から
題目の”妙法蓮華経”であり、仏陀は”一法”を”妙法蓮華経”と名ずけ、”妙”の字を”空”の義から般若経等で、
”法”の字を”法体”の義から法華経等で、
”蓮華”の字を”因果”(因縁)の義から華厳経等で、”経”の字を”仮”(現象世界)の義から阿含経等で、
それぞれの現われを説明し、
無量義経で生命の一瞬の生滅の繰り返しによる
諸法(世界)は
一法”妙法蓮華経”より生じるを説いて、法華経で一法の”妙法蓮華経”の具体的実態、諸法(世界)
即実相(一法)”妙法蓮華経”を説き明かし、涅槃経でその一法”妙法蓮華経”の流通を勧める(涅槃経巻九如来性品の
”法華・・・秋収冬蔵・・”等、付嘱の文より)。
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さらに天台はこの無量義経の生命の一瞬の生滅に着目し、
生命の一瞬の生滅の繰り返しで現れる実際の変化相(仮)(世界)は、その一瞬に、
統一された変化相の十如是(相、性、体、力、作、因、縁、果、報)に
よって、十界(地獄、餓鬼、畜生、修羅、人、天、声聞、縁覚、菩薩、仏)のそれぞれの世界の差異相(国土世間)
となって現れ、さらに十界それぞれの衆生(生命)(界単位)の差異相(衆生世間)となって現れ、さらに
十界それぞれの個々の衆生(生命)の差異相(五陰世間)と
なって現れることを見出した。さらに十界はそれぞれに十界を具すること(十界互具)から、
諸法(世界)は一瞬の生命(一念)に三千(百界、十如是、三世間)の世間の生滅の繰り返しとなって
あらわれる実相(一法)
であり、かつ実相(一法)は一瞬の生命(一念)に三千の世間の生滅の繰り返しとなってあらわれる諸法(世界)
であることを悟った。これが一法”妙法蓮華経”の実態であり、これを”理の一念三千”という。
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さらにまた十界
(地獄、餓鬼、畜生、修羅、人、天、声聞、縁覚、菩薩、仏)のそれぞれの”国土世間”の真の”国土世間”が
”娑婆世界”、すなわち”今ここ”の現実世界であることが法華経の寿量品で明かされる。
すなわちそれまで法華経以前に
さまざまな経で説かれていた十界それぞれの”国土世間”(例えば地獄は地の下、天国は空の上、修羅は
海の辺、声聞、縁覚は方便土、菩薩は実報土、仏は寂光土等)が、法華経にきてはじめて、
地獄界ら仏界までの”国土世間”の真の住所(場所)として、
本末究竟等して”今ここ”の”娑婆世界”(現実世界)であると決定された。
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さらにまた、法華経の方便品の”開示悟入”の文で十界の
それぞれの衆生(生命)にすでに仏界が備わっていることが示され、必然的に他の九界も備わって
いることになり、”十界互具”が
明かされ、九界(地獄、餓鬼、畜生、修羅、人、天、声聞、縁覚、菩薩)のそれぞれの衆生がそのままの
境涯でそれぞれの衆生の仏界を開くことで成仏できる”即身成仏”がその根拠とともに明らかにされた。
法華経以前の経(大日経、阿弥陀経等)に説かれる”即身成仏”はその有り様のみが説かれるだけで
その根拠(開示悟入、十界互具、一念三千等)は説かれていない。また、法華経ではその根拠から
九界のすべての衆生の成仏が示され、その九界のそれぞれの”成仏の記別”も説かれるが、
法華経以前の経(大日経、阿弥陀経等)では二乗、女人、悪人等の成仏は説かれないし、
説かれてもその根拠も”成仏の記別”も明かされず、”有名無実”であり、部分観或は
衆生の性欲(しょうよく)にしたがって説かれた
方便経だということがわかる。
|
仏陀は法華経の寿量品で応身如来(現実の仏陀)として
自分は三十歳のとき菩提樹下ではじめて成仏(始成正覚)したのではなく実は
過去久遠の昔にすでに成仏していたことを明かし、
生命が永遠であることを説いた。すなわち生命は”一念三千”の一瞬の繰り返しであり、
”一念三千”の一生の繰り返しであり、”一念三千”の
無限の繰り返しであることを明かした。しかし久遠の昔の成仏の”本因”が何であるかは文上に直截に
明らかには説かれず未来に托された。すなわち、法華経の迹門の方便品の
”諸法実相”の”理の一念三千”は嘱累品で
未来に托され、法華経の本門の寿量品の”本因”の”事の一念三千”は
神力品で未来に托された。(天台は法華経二十八品の前半の十四品を迹門、
後半の十四品を本門として二つに分けている。) |
法華経の迹門の”諸法実相”の”理の一念三千”は、
中国の”天台”によってすでに説かれた。法華経の本門の”本因”の”事の一念三千”は、
日本の”日蓮”によって説かれることになる。 |
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