-----BEGIN PGP SIGNED MESSAGE----- 夫(そ)れ、生を受けしより
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”夫(そ)れ、生を受けしより、死を免れざる理(ことわ)りは、賢(かしこ)き御門(みかど)より、卑き民に至るまで、人ごとに是(これ)を知るといへども、実に是を大事とし、是を歎く者、千万人に一人も有がたし、無常の現起するを見ては、疎(うと)きをば恐れ、親きをば歎くといへども、先立つは、はかなく、留るは、かしこきやうに思いて、昨日は彼のわざ、今日は此の事とて、徒(いたず)らに、世間の五慾にほだされて、白駒のかげ過ぎやすく、羊の歩み近づく事をしらずして、空しく衣食の獄につながれ、徒(いたず)らに、名利の穴にをち、三途の旧里に帰り、六道のちまたに輪回(りんね)せん事、心有らん人、誰か歎かざらん、誰か悲しまざらん。
嗚呼(ああ)、老少不定は、娑婆(しゃば)の習ひ、会者定離(えしゃじょうり)は、浮世のことはりなれば、始めて驚くべきにあらねども、正嘉(しょうか)の初め、世を早うせし人のありさまを見るに、或は、幼き子をふりすて、或は、老いたる親を留めをき、いまだ壮年の齢(よわい)にて、黄泉(よみじ)の旅に趣(おもむ)く心の中さこそ、悲しかるらめ、行くもかなしみ、留るもかなしむ、彼(かの)楚王(そおう)が神女に伴いし情を、一片の朝の雲に残し、劉氏(りゅうし)が仙客に値(あい)し思いを、七世の後胤(こういん)に慰む、予か如き者、底に縁(よ)って、愁(うれい)いを休めん、かかる山左(やまかつ)の、いやしき心なれば、身には思のなかれかしと、云いけん人の古事(ふるごと)さへ、思い出でられて、末の代のわすれがたみにもとて、難波(なにわ)のもしほ草をかきあつめ、水くき(茎)のあとを、形の如くしるしをくなり。
悲しいかな、痛(いたま)しいかな、我等無始より已来(このかた)、無明(むみょう)の酒に酔て、六道・四生に輪回して、或時は、焦熱(しゃくねつ)・大焦熱の炎にむせび、或時は、紅蓮(ぐれん)・大紅蓮の氷にとぢられ、或時は、餓鬼(がき)・飢渇(けかち)の悲みに値(あ)いて、五百生の間、飲食(おんじき)の名をも聞かず、或時は、畜生・残害の苦みをうけて、小さきは大きなるにのまれ、短きは長きにまかる、是(これ)を残害の苦と云う、或時は、修羅・闘諍(とうじょう)の苦をうけ、或時は、人間に生れて、八苦をうく、生・老・病・死・愛別離苦(あいべつりく)・怨憎会苦(おんぞうえく)・求不得苦(ぐふとっく)・五盛陰苦(ごじょうおんく)等なり、或時は、天上に生れて五衰(ごすい)をうく、此(か)くの如く、三界の間を、車輪のごとく回り、父子の中にも、親の親たる、子の子たる事をさとらず、夫婦の会遇(あいあえ)るも会遇(あいあえ)たる事をしらず、迷へる事は、羊目に等しく、暗き事は、狼眼(ろうがん)に同し、我を生(うみ)たる母の由来をもしらず、生を受けたる我が身も死の終りをしらず、嗚呼(ああ)、受け難き人界の生をうけ、値(あ)い難き如来の聖教に値い奉(たてまつ)れり一眼の亀の浮木の穴にあへるがごとし、今度(このたび)、若(も)し、生死のきづなをきらず、三界の蘢樊(ろんはん)を出でざらん事、かなしかるべし・かなしかるべし。”

(2005.04.21)
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