”集団的自衛権”、の解説(すべて抜粋記事の抜粋)



デジタル大辞泉の解説
しゅうだんてき‐じえいけん 〔シフダンテキジヱイケン〕 【集団的自衛権】

国連憲章第51条で加盟国に認められている自衛権の一。ある国が武力攻撃を受けた場合、これと密接な関係にある他国が共同して防衛にあたる権利。→個別的自衛権

◆日本は主権国として国連憲章の上では「個別的または集団的自衛の固有の権利」(第51条)を有しているが、日本国憲法は、戦争の放棄と戦力・交戦権の否認を定めている(第9条)。政府は憲法第9条について、「自衛のための必要最小限度の武力の行使は認められている」と解釈し、日本の自衛権については、「個別的自衛権は行使できるが、集団的自衛権は憲法の容認する自衛権の限界を超える」との見解を示している。

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同盟国など他国への攻撃を自国に対する攻撃とみなして反撃できる権利で、歴代内閣は「保有しているが行使はできない」という立場。憲法9条の解釈では、日本の自衛権発動には(1)我が国への急迫不正の侵害がある(2)他の適当な手段がない(3)必要最小限度の行使――の3要件を示しており、集団的自衛権の行使は「我が国を防衛するための必要最小限の範囲を超え、憲法上許されない」という判断だ。
( 2013-08-10 朝日新聞 朝刊 4総合 )

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集団的自衛権 【しゅうだんてきじえいけん】
国際連合憲章第51条は,加盟国に対し安全保障理事会が必要な措置をとるまでの間に限って自衛権の行使を認めている。そこでは1国による個別的自衛権のほかに,その国と密接な関係にある他の国が共同して自衛行動をとる集団的自衛権をも認めている。

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大辞林 第三版の解説
しゅうだんてきじえいけん【集団的自衛権】

ある国が武力攻撃を受けた場合に,これと密接な関係にある他の国が共同して防衛にあたる権利。この権利を行使する国に対して,直接かつ現実の武力攻撃があることを必要としない。国連憲章で加盟国に認められている。 → 個別的自衛権

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世界大百科事典内の集団的自衛権の言及
自衛権】より

…また植民地解放戦争において,従属人民の武力行使の権利の合法性を民族自決権の行使にもとめる見解があり,従来の自衛権概念を動揺させている。【高柳 先男】

[集団的自衛権]
自国が直接攻撃を受けなくとも他国への攻撃を自国も攻撃を受けたものとみなして反撃することのできることを集団的自衛権という。これが新たに国連憲章51条に挿入された理由は,同じく国連憲章がその8章で認める地域的取極(とりきめ)の当事国間の相互援助義務の発動が安全保障理事会の許可を必要とするため,同理事会での大国の拒否権行使の結果その許可がえられない場合にも,集団的自衛権を援用して外部からの武力攻撃に対する相互援助を可能にするためであった。…

【自衛隊】より
…初期の政府見解では自衛隊が実力を行使できる範囲は領土,領空,領海に限定されていたが,その後,侵略を防止するために必要があれば公海上での戦闘も可能とされ,さらに,明らかに日本を攻撃しようとしている場合には,他国領内の侵略軍発進基地を攻撃することまでも許されるとされている。(4)国連憲章51条は集団的自衛権を認めている。集団的自衛権とは,自国と特別の関係にある国に対して第三国が攻撃,侵略を行ったときに,自国が同様に攻撃,侵略されていないので固有の自衛権発動の要件に欠けるにもかかわらず,その第三国に軍事的に反撃する権利である。…

【戦争】より
…このように国連憲章体制は,法上の戦争のみならず事実上の戦争をもその呼称のいかんを問わず放逐し,戦争違法化をさらに徹底させたが,そこにおいてもなお次のような一定の武力行使が例外として許容されている。それらは,(1)平和に対する脅威,平和の破壊および侵略行為に対する国連の軍事的強制措置(第7章,とくに42条),(2)個別的または集団的自衛権に基づく武力行使(51条),(3)第2次世界大戦中の旧敵国に対する特別措置としての武力行使(107条,53条1項但書)の場合である。これらのうち,(1)の軍事的強制措置は国連の集団安全保障体制の中核をなすもので,憲章上の国連軍によってとられることが予定されている。…

【戦争の放棄】より
…これに対して第2次大戦後の国際連合憲章(1945年6月締結,同年10月発効)は,〈すべての加盟国は,その国際関係において,武力による威嚇又は武力の行使を,……慎まなければならない〉(2条4項)として,事実上の戦争をも禁止することで戦争の違法化を大きく前進させた。しかし憲章は,加盟国の〈個別的自衛権〉を承認するとともに新しく〈集団的自衛権〉を認めたために,自衛権を名目とする武力行使の可能性が広がった面のあることは否定できない。

[日本国憲法における戦争の放棄]
上のような背景を考慮して,日本国憲法における戦争の放棄の特色を考えると,第1に,平和的生存権という新しい人権を保障する目標のもとに戦争放棄が位置づけられていること,第2に,事実上の戦争を含めて広く戦争を放棄していること,第3に,戦争放棄に対する実効的方法として新たに〈陸海空軍その他の戦力〉の不保持と〈交戦権〉の否認をつけ加え,結局,自衛権を名目とした戦争をも否定していること,の3点を指摘することができる。…

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集団的自衛権の行使の容認は難しい
"20日付で最高裁判事に就任した前内閣法制局長官の山本庸幸氏(63)が同日、最高裁で記者会見し、憲法9条の解釈変更による集団的自衛権行使の容認について、「私自身は難しいと思っている」と述べた。"
出典時事ドットコム:憲法解釈変更「難しい」=集団的自衛権で山本新判事−最高裁

・最高裁判事がこのような政治的課題に言及するのは異例の事。

"最高裁で行われた会見で山本氏は、集団的自衛権の行使を巡る政府の憲法解釈の見直しに関する議論について、「今の憲法の下で半世紀以上議論され、維持されてきた憲法解釈であり、私自身としては見直すことは難しいと思っている」"
出典最高裁判事 集団的自衛権巡る憲法解釈に言及 NHKニュース

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これまでの歴史を振り返って:解釈改憲によって9条と自衛隊の存在との整合性を保ってきた日本政府

"憲法制定当初、吉田首相は、「第9条は直接には自衛権を否定していないが、2項が一切の軍備と国の交戦権を認めない結果、自衛権の発動としての戦争も、又交戦権も抛棄した」旨答弁"
出典第3部_[平和主義と安全保障]2.自衛権の有無(集団的自衛権を含む)と自衛隊の位置付け

・自衛隊発足前は、「戦力」については限りなく不保持という政府見解だった。

"1954年の自衛隊発足にともない、鳩山内閣は、「1項は独立国家に固有の自衛権までも否定する趣旨のものではなく、自衛のための必要最小限度の武力を行使することは認められている」とした。これにより、第2項が保持を禁止する「戦力」は、「近代戦争遂行能力」から「自衛のための必要最小限度を超える実力」に変更され、この政府統一見解の内容は、現在に至るまで維持されている。"
出典第3部_[平和主義と安全保障]2.自衛権の有無(集団的自衛権を含む)と自衛隊の位置付け

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自衛隊を「自衛のための必要最小限度の武力」と現在では解釈している。そして今度は「集団的自衛権の行使」の解釈が議論になっている。 "憲法第9条の下において許容されている自衛権の行使は、わが国を防衛するため必要最小限度の範囲にとどまるべきものであり、他国に加えられた武力攻撃を実力をもって阻止することを内容とする集団的自衛権の行使は、これを超えるものであって、憲法上許されないと考えています。"
出典防衛省・自衛隊:憲法と自衛権

・防衛省による現在の「集団的自衛権の行使」に関する見解。政府見解においても、自衛隊は合憲としても集団的自衛権は憲法違反とする見解だった。

"現状の政府の見解は「非武装地域への海外派遣は、集団的自衛権に当たらない」とし、イラク派遣やPKOへ自衛隊を出している。
逆に、反対派は「非武装地域であろうと武器をもって海外に行くのは海外派兵にあたる。自衛隊は専守防衛のみに専念すべきだ」と述べている。"
出典自衛隊の海外派遣について教えてください。 | 政治のQ&A【OKWave】

・しかし、湾岸戦争以後の自衛隊の海外派遣(PKO活動など)では、憲法で「禁じている」集団的自衛権の行使にはあたらないとの見解。ただし、この政府見解に対しては批判的な人も少なくない。
・自衛隊を「自衛のための必要最小限度の武力」と表現する事で、憲法9条でいう「戦力」にはあたらないと解釈するのが今の政府見解。
・これ以上の解釈改憲は難しいのではないかとする見解だそうだ。

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9条を安易に変えることは平和主義の理念を損ねる

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